未知の世界にひきこまれる!不思議がいっぱいな深海生物の世界

深海の世界は解き明かされていない謎が多く、不思議がいっぱいです!

TBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」で、海洋研究開発機構 研究員の藤原義弘さんが深海生物のお話をされていました。

今回は、そのお話の中から

  • クジラが深海に沈んだらどうなるの?
  • 深海で発見された新種
  • 深海のユニークな生物

についてご紹介します。



クジラが深海に沈むとどうなるの?

クジラは深海の2000年分の食料になる!?

深海には、生き物のエサがほとんどありません。食料は、海の表層から落ちてくるわずかな有機物だけです。

しかし、もし巨大なクジラの死骸が深海に沈んできたらどうなるでしょう? それは、まるで2000年分の食料が一度に降ってくるようなものなのです。

クジラは死ぬと浮力を失い、ゆっくりと海の底へ沈んでいきます。そして、深海にたどり着いたクジラの死骸のまわりには、特別な生態系が生まれます。

実際に、クジラの死骸がある場所では、ほかの場所では見つかっていない珍しい生物が次々と発見されています。

どうやってクジラの死骸を観察するの?

広い海の中で、自然に沈んだクジラの死骸を見つけるのはとても難しく、これまでに発見された例はごくわずかしかありません。

そこで、研究者たちは浜に打ち上げられたクジラの死骸を意図的に深海へ沈めて観察を行います。

しかし、クジラの死骸は非常に大きく、強い臭いを放つため、陸上での輸送は困難です。そのため、漁協などの許可を得たうえで、打ち上がった場所から直接船で沖へ運びます。

沖に運んだ後は、巨大なコンクリートブロックを取り付けて沈め、その後、深海に集まる生物たちの様子を詳しく観察するのです。

クジラが沈んだところで繰り広げられる生命現象

クジラが海底に沈むと、その場所では約100年もの間、生物たちの集まりつづけます。

  1. 第一段階
    最初に、さまざまな生物がクジラの肉を食べます。

  2. 第二段階
    肉がすべて食べられて骨だけになると、骨に根を張って過ごす生物が現れます(例: ホネクイハナムシ)。

  3. 第三段階
    骨から硫化水素が発生すると、そのエネルギーを利用して生きる生物たちがやってきます。

  4. 最終段階
    硫化水素が出なくなると、骨に引っ付いて生きるイソギンチャクの仲間などが現れます。

クジラは、死後も深海のさまざまな生物の命を繋いでいるのですね。



新種の深海魚「ヨコヅナイワシ」発見!

2021年1月、日本で最も深い駿河湾(深さ2500m)から、新種の魚「ヨコヅナイワシ」が発見されたと発表されました。

この魚はセキトリイワシの仲間で、体長は1.4mにもなります。通常のセキトリイワシは30〜40cmほどですが、ヨコヅナイワシはそれをはるかに超える大きさのため、「横綱」の名がつけられました。

深海魚には、大きな頭と小さな体を持つおたまじゃくしのような形や、細長い体型のものが多いですが、ヨコヅナイワシは普通の魚に近い形をしているのが特徴です。また、ソウギョに似た立派な尾びれを持ち、遊泳能力も高いと考えられています。

さらに、サメがいない深海では、ヨコヅナイワシが最強の捕食者(トップ・プレデター)として君臨しています。トップ・プレデターは生態系のバランスを保つ重要な役割を持っており、ヨコヅナイワシもその役割を果たしていると考えられています。

今後、他の深海でも異なるトップ・プレデターが存在する可能性があり、研究が続けられています。

深海のユニークな生物たち

チョウチンアンコウのオスは究極のヒモ⁉

チョウチンアンコウのオスは、メスから栄養をもらいながら生きていくため、「究極のヒモ」と呼ばれることがあります。

チョウチンアンコウのメスは、頭の上に釣り竿のような器官を持っており、これをエサと勘違いして近づいてきた魚を捕食します。しかし、このような狩りをするのはメスだけなのです。

一方、オスはメスに比べてとても小さく、ある種ではメスが40cmなのに対し、オスはわずか2cmほどしかありません。

オスは成長するとメスを探し、見つけるとメスの体にかみつきます。すると、オスの皮膚や血管がメスの体と一体化し、二度と離れられなくなります。 こうしてオスは、メスの体から栄養をもらいながら生き続けるのです。

メスが産卵をすると、そのタイミングでオスが受精を行います。これは、メスのホルモンの変化をオスが感じ取っているのではないかと考えられています。

さらに、一匹のメスに複数のオスがついていることもあり、中にはオスが寿命を迎えるとメスに吸収される種類も存在します。

深海は食料が少なく、生き残るのが難しい環境です。チョウチンアンコウのオスは、メスに寄生することで確実に子孫を残せるように進化してきたのではないかと考えられています。

 

体に牧場をもつ!?ゴエモンコシオリエビ

エモンコシオリエビは、非常に特異な方法で食料を得ています。彼らは、エサとなるバクテリアを自分の胸毛に付けて育て、それを食べるのです。

これらのバクテリアは、海底に湧く高温の温泉(水温約400度)の硫化水素を利用して、無機物から有機物を合成します。このバクテリアは、エビにとって貴重な食料源となります。

そのため、温泉周辺には大量のゴエモンコシオリエビが生息しており、バクテリアを育てるための特別な環境を作り出しています。

エビは、こしとりやすい構造を持つツメを使って、胸毛に付いたバクテリアをこそいで食べるのです。この食べ方は、深海の過酷な環境で生きるために進化した一例と言えるでしょう。

体の中でバクテリアを育てるハオリムシ

ハオリムシは、非常にユニークな方法で栄養を得ています。彼らは、体内でバクテリアを育て、そのバクテリアが作る有機物を栄養源としているのです。

ハオリムシは、口や消化管を持っていません。代わりに、エラから硫化水素を取り入れて、その成分を利用して体内でバクテリアを育てます。このバクテリアは、硫化水素を使って有機物を合成し、ハオリムシはその有機物を栄養源として生きています。

このような生態は、深海の過酷な環境で生きるために進化した特異な方法であり、硫化水素を利用した化学合成によって生きる生物たちの中で重要な存在となっています。



知れば知るほど未知の世界にひきこまれる

深海生物は不思議がいっぱいで、その面白さにひきこまれます。藤原義弘さんが監修・執筆された図鑑をご紹介します。

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未公開を含む貴重な深海魚の写真が満載のこの図鑑は、大人も子どもも一緒に楽しめる内容です!

深海という未知の世界への好奇心がかき立てられ、分かりやすい解説に夢中になること間違いなしです。

特に、今回紹介された新種のヨコヅナイワシの映像がDVDで見られるのは貴重な体験です。

深海の神秘を身近に感じることができ、まるでその世界に足を踏み入れたかのような感動を味わえます。

家族で一緒に、または自分だけの深海探検を楽しみたい方にぴったりな一冊です!

 

沼津港深海水族館では深海魚を見ることができます。ぜひ行ってみたいです!

最後まで読んでくださりありがとうございます。



藤原義弘さんのプロフィール

1969年 岡山県生まれ

1993年 海洋科学技術センター(現在、JAMSTEC海洋研究開発機構)入所

研究員として鯨骨生物群集など、国内外でさまざまな深海生物の調査、研究を続けている。

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