学校の長期休みに入ると、改めて学校給食のありがたさを感じますね。
7月31日放送のTBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」では、小学校の管理栄養士・松丸奨さんが学校給食について語りました。
子どもの頃は給食が苦手だった松丸さん。しかし、ある出来事をきっかけに人生が変わり、「最高においしい給食」を目指して試行錯誤を重ねています。
子どもたちの声に耳を傾け、寄り添いながら日々奮闘する姿は、とても印象的です。
この記事では、給食や栄養士の仕事への理解が深まるお話や、食の悩みを解決する本をご紹介します。給食が苦手なお子さんへのヒントも詰まっているので、ぜひ読んでみてください。
給食嫌いを克服して栄養士に!
松丸さんは、小学校に入学した当初、給食が苦手で食べられませんでした。
そんなある日、栄養士さんから「給食には君の体に良いものしか入っていない。一口でいいから頑張って食べたら、きっといいことが起きるよ」と声をかけられます。
「一口なら頑張れるかも」と食べてみたところ、たまたま逆上がりが成功。「これは給食のおかげかも?」と思うようになりました。
その後も、「今日は足が速い気がする」「もう一口食べたら、二重跳びができるかも」と、少しずつ食べる量が増え、気づけば給食が大好きに!
高校で進路を考える時期、担任の先生の「好きなことを仕事にできたら素敵だよ」という言葉に背中を押され、給食に関われる栄養士の道を選びました。
卒業後、当時は学校の栄養士がほとんど女性だったため採用は難しいと考え、まずは病院で5年間経験を積むことに。そしてついに、文京区の小学校で念願の栄養士として働くことになりました。
最高においしい給食を目指して乗り越えた壁
松丸さんは以前、ラーメン激戦区にある小学校に勤務していた際、「ラーメン屋を超えるラーメンを給食で出したい」と考えました。
仕事終わりにはラーメン屋に通い、出汁の研究を始めました。
食材について知りたいとき、店長には聞けなかったため、店の裏にあった段ボールに記載されていた業者に電話をかけ、必要な情報を得ることができました。
しかし、予算が合わないため、どうにか安価な食材で作れないかと業者に粘り強く相談。
そこで教えてもらったのが、ノーブランドの食材でした。
例えば、羅臼昆布や日高昆布などの高級昆布は、その場所で獲れたものにブランド名がつきますが、少し外れた場所で獲れたものはブランド名がつけられず、価格が安くなります。
それでも、味はほとんど変わらないことが分かりました。
このノーブランドの食材を使って、安くておいしい出汁を作ることができ、子どもたちや先生方から「給食のレベルではない」と絶賛され、大変嬉しかったそうです。
松丸さんは、何事にも情熱を注ぎ、本気で取り組むことで、どんな壁も乗り越えられると信じています。
残食ゼロを目指して研究・工夫の日々
松丸さんは、周りから「給食なのに」「給食だから」と言われても、「給食だからこそ、本気でやりましょう」という強い思いを持っています。
児童に「最高においしい」と言って食べてもらいたいと考え、日々研究と工夫を重ねています。例えば、苦手な野菜にはりんごやたまねぎをすりおろして甘味を加えるなど、家庭でも試せるアイデアを取り入れています。
ある日、人気メニューの揚げパンの日に、「今日は揚げパンだよ」と声をかけていたところ、2年生の男子が「揚げパンかぁ。胃にもたれるんだよなぁ」と言いました。それまで、揚げパンは適当な時間で揚げていたため、中には揚げすぎのものもあったことに気づきます。
そこで、温度計とタイマーを使って、最適な揚げ油の温度と揚げ時間を研究。一ヶ月間揚げパンを揚げ続け、200度で1分10秒の揚げ時間がベストだと分かりました。
その後、男子にどうだったか尋ねると、「これなら胃は大丈夫!」と言ってくれたそうです。このように、松丸さんは子どもたちの声を大切にし、より良い給食作りに取り組んでいます。
子どもたちが親しみやすい栄養士を目指して
みなさんは学校の先生の顔や名前を思い浮かべられるかもしれませんが、栄養士さんのことはどうでしょうか?
松丸さんは、「顔と名前を思い浮かべてもらえる身近な存在になりたい」と考えています。児童と近い存在になれば、苦手な食べ物を相談されたときにも、より良い対応ができるからです。そのため、配膳中や食事中にクラスを回り、子どもたちと積極的にふれあい、心に寄り添っているそうです。
また、松丸さんは小学生のころ、栄養士さんに人生を変えてもらった経験があり、児童の人生にも大きな影響を与える仕事であることを身をもって実感しています。
松丸さんの給食に対する熱い想いに、心が動かされました。高い志を持って、楽しんで取り組んでいる姿は、子どもたちに「自分たちのために頑張ってくれている」と伝わるでしょうし、大人としても素晴らしい指針となっているに違いありません。
食の悩みを解決するヒントに!おすすめの本
松丸さんの著書をご紹介します。食に関する悩みを抱えている方や、子どもたちの食事をより良くしたいと考えている方におすすめです。
「子どもがすくすく育つ日本一の給食レシピ」 講談社
子どもたちに大人気のメニューが登場し、どれも栄養満点で色鮮やか。忙しい日でもパパっと作れて、家族みんなが笑顔に!
栄養バランスを考えた美味しい料理が、まるで給食を再現するかのように食卓を彩ります。これで、食事の時間がもっと楽しく、健康的に変わりそうです!
「ママと子のごはんの悩みがなくなる本」 サンマーク出版
この本は、子育て中の保護者が抱える「食」に関する悩みに寄り添った一冊です。子どもの好き嫌いや食べムラに関する悩みを解決するヒントが満載で、とても参考になります。
特に、好き嫌い克服レシピが紹介されていて、実際に試してみたくなるアイデアがいっぱい。毎日の食事が楽しく、栄養もしっかりと取れるレシピが多いので、育児中の親にとって心強い味方になること間違いなしです!
「日本一の給食メシ」 光文社

この本は、忙しい方にぴったりの時短レシピ集です。簡単な工程で作れるレシピが中心で、忙しい日常でもササッと作れるので、時間に追われている方に最適です。
また、子どもと一緒に作るのにもぴったりで、楽しく食育ができるメニューが紹介されています。手軽で美味しい料理がすぐに作れるので、家族みんなで楽しめる一冊です。
どの本も食の悩みを解決するヒントになると思いますので、ぜひ読んでみてください。
松丸奨さんのプロフィール
1983年 千葉県松戸市生まれ
華学園栄養専門学校 卒業後 栄養士として病院勤務
2008年 文京区内の小学校に勤務
2013年 全国学校給食甲子園にて男性栄養士で初めての優勝