「お寺の掲示板」心にしみる!新たな気づきを得る!ありがたい一言

心が軽くなる考え方

みなさんは「輝け!お寺の掲示板大賞」をご存じですか?

TBSラジオ「赤江珠緒のたまむすび」(2022年12月29日放送)にて、僧侶の江田智昭さんが「お寺の掲示板」についてお話されていました。

今回は「お寺の掲示板」より、人生において背中を押してくれたり、元気をくれたり、寄り添ってくれる言葉をご紹介します。



どうやって「お寺の掲示板大賞」が選ばれるの?

お寺の門前にある掲示板に、ありがたい言葉がひとこと書いてあるので、それを見た人にスマホなどで写真に撮って、SNSに投稿してもらいます。

その作品の深さやありがたさを基準に良い作品を決めています。

2018年に第一回を開催し、700もの作品の投稿がありました。第五回目の2022年は、過去最高の4093作品が寄せられました。

掲示板の言葉は、ご住職が書かれる場合が多いですが、他の僧侶が書く場合もあります。

多くのお寺は月に1度変えていますが、毎日、新しいものを書かれるお寺もあります。

世相を表す言葉も多くあります。2022年の傾向は、ウクライナの戦争に影響されて、反戦を訴えるものが多かったです。

2022年の作品

「お寺の掲示板」の言葉と、江田智昭さんの解説をご紹介します。

受賞作品

大賞作品

「武器を捨て 数珠を持とう」

京都府京都市 浄土宗 龍岸寺 住職のご長男10歳の作品です。
手書きの文字と戦車や兵士のイラストが描かれています。
まさに反戦を訴えたもので、シンプルすぎるのではと思われるかもしれません。

2022年は色々とユーモアのあるものや、ひねった作品が多い中、お子さんのシンプルなストレートな言葉が響きました。
史上最年少の受賞となりました。

大人になると、色々と諦めることが多く、あれがこうだから仕方ないよねという気持ちがありますが、子どもは違います。

「仏説無量寿経」の中に「兵戈無用(ひょうがむよう)」とあります。武器も兵力も必要がないという意味です。
拝む心、敬う心、感謝の言葉を大切にしてもらいたいと、この作品を選びました。

 

入賞作品

「毒言吐いたら 自分も浴びる」

広島県広島市 浄土宗妙慶寺の作品です。
悪口を言ったら、必ず自分に返ってくるという意味ですね。
インターネットのSNSなどで、色々な悪口が多く書かれています。そういう時代に合った作品です。

お釈迦様は「スッタニパータ」の中で、「人は生まれた時に、口の中に斧を持っている。悪口を言うとその斧で自分を切り裂くのだ」とおっしゃっています。
匿名で書かれている悪口も、必ず自分に返ってくるので気を付けましょう。

誰しも褒められたほうがいいのです。嫌な考えを発信すると、その言葉に染まっていきます。
そして「あんなことを書いたのだから、自分も批判されるかもしれない」と自分の行動に制限をかけてしまって、自信をなくしてしまいます。

 

入賞作品

「今日だけですよ」

宮城県仙台市 真宗大谷派 長稱寺の作品です。
この言葉を聞くと、「今日だけ特別ですよ」という許しの言葉だと思われる方が多いのではないでしょうか。

ある方が、「スナックでツケを頼んだ時に、ママさんから言われそうな言葉」という感想を持たれました。そのように、許しや優しさを感じ取ることができますね。

しかし、この言葉は「今日しかない」「明日があるとは保証されていない」という言葉でもあります。諸行無常を説いている言葉でもあるのですね。
様々に解釈できる点でも良い作品です。

 

江田智昭さんおすすめの作品

「一人だと孤独感 

二人だと劣等感 

三人だと疎外感」

短い言葉で、人間関係によっておこる苦しみのメカニズムをあらわしています。

2021年にも「一人じゃさみしい 二人はわずらわしい」という大分の正行寺の入賞作品がありました。

人間の心とは身勝手なもので、一人だと孤独で不安だけど、二人だとその人と比べてしまい、劣等感を持ってしまいます。三人以上だと、自分がのけ者になった気持ちになって、危機感がうまれます。
人間は、どのような状況になっても、何かしらの苦しみを持ってしまうのは当たり前のことです。

お釈迦様は、「サイのツノのように、ただ一人で歩め」とおっしゃっています。サイはあまりぶれないので、サイの前に付いているツノもまっすぐに進みます。あまり孤独を恐れずに歩んで行きなさい、という意味です。

また「他人のしたこと、しなかったことを見るのではなく、自分のしたこと、しなかったことだけを見なさい。」ともおっしゃっています。孤独を恐れず、他人のことを気にしすぎないこと、それが幸せに生きていく上でのヒントだとおっしゃっています。

情報社会で、他人の情報が入りやすく、そのために他人が気になってしまい、苦しみが発生しています。時には「見ない」ということが大切なのかもしれません。

 

「悩みがなくなることが救いではない 

共に悩めることが救いです」

福岡県 安勝寺に掲示されたもので、真宗大谷派僧侶の安田理深さんのお言葉です。
仏教の教えによって、完全に悩みがなくなることはありません。

2022年は、宗教が悪い意味で取り上げられた年でした。真面目で完璧主義の方ほど、悩みをすべてなくしてしまいたいと思われるような傾向があると思います。

人間は基本的に煩悩が消えることはありません。人々に寄り添って、安心して悩む場所をつくるのが宗教の役割であり、お寺もそうありたいと思います。

 

「人生に花が咲こうが咲くまいと

生きていることが花なんだ

生まれてきたことが 花なんだ」

広島県広島市 超覚寺に掲示されました。
昨年の10月にお亡くなりになった、アントニオ猪木さんのご著書の題名です。

アントニオ猪木さんは、闘病生活中もテレビやYouTubeで元気な姿を見せ続けていました。アントニオ猪木さんの中では、何かができなくなっていくことがダメな事だという考えがなかったのではないでしょうか。

生きて存在していることこそが「はな」なのだ、それが尊いのだという意識の中にあったから、最期の死の直前まで姿を見せ続けたのだろうと思います。



いかがでしたか?心にグッとくる言葉があったのではないかなと思います。

お寺の掲示板には手書きの作品もあり、強い文字、優しい文字、個性的な文字と字からも伝わってくるものがあります。

また、自分で自由に解釈できるのも魅力です。急激に人生が変わるなんてことはないでしょうが、ふと立ち止まって、頭の中を整理できたり、こんな考え方もあるのだと切り替えができたり、そんな体験があるかもしれませんね。

江田智昭さんのご著書にも、たくさんの名文と解説が載っているのでご紹介します。

「お寺の掲示板」 新潮社

「お寺の掲示板 諸法無我」新潮社

連載「お寺の掲示板の深~いお言葉」 (ダイヤモンド・オンライン)ダイヤモンド社
https://diamond.jp/category/s-templeBB

ぜひ読んでみてください。

今年はお寺の掲示板に注目していきたいと思います。

みなさんもお寺の掲示板でグッときた言葉を見つけたら、写真を投稿されてはいかがでしょうか。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

浄土真宗本願寺派僧侶の江田智昭さんのプロフィール

1976年 福岡県生まれ

早稲田大学社会科学部卒業

築地本願寺内の仏教総合研究所勤務

2011年から2017年までドイツ惠光寺にてヨーロッパ開教・日本文化の発信事業に携わる

2017年 仏教伝道協会に勤務

2018年 お寺の掲示板に書かれている言葉の、インパクトやユニークさを評価する「輝け!お寺の掲示板大賞」の企画をスタートさせる

これまでに、お寺の掲示板に関する本を2冊出されている

2022年5月8日 TBSラジオ「お坊さんミュージアム」に出演 J‐POPの歌詞を仏教的に解釈するというお坊さん目線で解きほぐす企画に参加

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